2021年9月13日月曜日

連載『Ego』第5回

 楽しそうな出来事

何とか打破したい。

何度も挑戦するが中々思うようにならない。


それは、かなり体力と技術力の必要なステージの後で始まった。


立ち止まらず、諦めず進んだ先に出会ったのは伽藍洞の世界。

何の苦労も、何の記憶もほとんど必要としない乗るだけで良かった。

けれど時間的には2つ目と同等程度を費やす。


この世界の法則では、苦難ある世界は思考力に時間を費やし、楽観的な世界では体力を消耗させるようになっている。

費やす時間は同等であるのに体感が反比例するように仕組まれている。


アップ アンド ダウン

このリズムを習得した”犯人”は既に学習能力を獲得している。

そのため次は、体力と思考力、そして判断力を駆使し、併せて技術力と予測能力を持たなければ終わることは出来ない。


皆、立ち止まる。

皆、恐れる。

「これまでの苦労が水の泡になるやもしれない」

「それはご免だ」

戦略を練る。


だが初めて出くわす者には何も見えず、怒号をいきなり浴びせられたじろいでいる。


同じような仲間が現れ、手に手を携え、ある一定の体力を消耗した所で互いに一旦休む。


「一緒に出来たね」

そんな会話が心の中で湧き上がる。


恐ろしい出来事を誰かと乗り越えられた喜びを彼は与える。


ある意味で、ここに来てようやく、”それらしい世界”を体験出来たような気になれる。

連帯感も味わえる。

達成感も味わえる。

思わぬ褒美もある。

何となく解ったような気になれる。


だが本当の意味は何も解って居らず、本質も意図も何も掴めて居ない事には気付かない。


打たれれば打たれる程に我慢、忍耐を養って行く。

勝者になりたい

その盲目的な衝動から、やる気が湧き上がる感覚を覚える。


”犯人”は安堵する。


馬鹿め

彼は嘲笑し歓喜の祝杯を怒号と共に、奇声を挙げる。

彼を見たことも知ることもない”犯人”たちとの連帯感が生まれる空間がそこにある。


風前の灯の中でパーティーが始まる。

パーティーの傍らでは、計画に失敗し朽ち果てた者たちのパーティーの残骸が”犯人”たちのパラダイスにもなっている。


『狂気の沙汰』


それは彼にも感じない。

喜びは何もかもを錯覚させてしまう。




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