意外性
それは、ハッピーエンドでもバッドエンドでもない。
アドレナリンに打たれ、コールタールの中を突き進む快感に満ち溢れた世界。
何の使命感なのか意味も解らないまま、ただただ終わるまで進もうとする。
もう結果なんかどうでも良い。
対価と報酬のことは忘れさせられている。
中には用意周到に準備して来た者も居たのかもしれない。
何が何だか
誰が誰だか
何処がどうなのか
最後に何が起こるのか
何も解らない。
彼に試されるのは、自らを失わせる覚悟だけ。
彼は初めからそうだった。
何も教えなかった。
感じるのは自分だとも伝えなかった。
何かが得られるとも言わなかった。
やっと目的の行動に達した気分になれる世界がネズミ捕りの後に待っていた。
彼は見ている。
貪るだけ貪い尽くした”犯人”たちが、どうやって自爆して行くのかを。
彼は与える。
「何だ?どうしたんだ?」
そう思わせる、あの手この手のアクシデント。
交通事故の瞬間のような心拍数は、ほんの何分間かで無になる。
計算された自分が掛かった時間分の待ち時間の間に、思い付く。
「もう待ってても仕方ないから」
散々、捨て鉢な気分でそこまで辿り着いて、告知通りの『すべてを失う』が起こるかもしれないというのに、妙な納得感がある。
試された通りに”犯人”たちは一度『覚悟』を決めた。
だから諦めにも似た気分で呆然と待っている。
直ぐに解消され、連れて行かれたのは何も変わらない振り出し。
だが、何か雰囲気が違う。
「あれ?」と、そこで初めて ”元の我” に返って辺りと自分の状況を確認する。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、
10カウント目でメッセージがわっと現れる。
文章理解能力もやや崩壊し掛かる間際で、
「あれ?まだ続いてるのか!」
無になった訳ではないんだと、ホッとして習得した方法で戻ってみる。
すると、先程のアクシデントの続きからまた世界が始まる。
あとはお任せ
好きにしろ
彼は無視する。
けれど、まだ手放してはくれない
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